Facebookのプライバシー問題

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) で人気のFacebookにまたプライバシー問題が起きている。Facebookについては、「Googleを越える勢いのFacebook」というタイトルで、2ヶ月前にも書いたが、すでにそのユーザー数は世界で4億人を越え、5億人に近づいている最も人気の高いSNSサイトだ。

Facebookは以前から、すでに何回かプライバシーが問題となっているが、この4月に発表されたOpen Graphプラットフォームで提供されるinstant personalization機能で、ふたたび問題となり、ワシントンの国会議員まで問題視する人が出るほどの問題になってしまった。簡単にどんなものかというと、これはFacebookのソーシャル性をFacebook以外のウェブ全体に広げようという試みだ。具体的に言うと、たとえば、cnn.comのニュースで何か気に入った記事があれば、Facebookで他人のコメントや写真などにするのと同じように、「Like」とコメントすることができる。そして、その情報は、Facebook上の友人に知られるだけでなく、外部の広告主(当初75社)にも伝えられるという。また、Facebook内でも友人と指定した人以外にもその情報が伝わるという話もある。どこまでの情報が自分の知らない人や、広告主サイトに提供されるかについては、はっきりしない。

大きな問題のひとつは、ユーザーがこのシステムに参加したければ参加できる、というものではなく、何もしなければ自動的に参加することになり、参加を取りやめたければ、自らそのような対応をしなければならないことだ。また、参加取りやめの方法が大変複雑で、いくつものステップを通らなければならないことだ。一説によると、すべてのオプションを調べながらやると、50回以上クリックしなければ参加を取りやめられないという話もある。

そもそもSNSは、友人同士がつながっていたり、新しい友人が出来たりするシステムなので、プライバシーのために情報を保護する、というよりも、出来るだけ情報をシェアしましょう、という考えが根本にあり、それは、CEO Mark Zuckerberg氏のプライバシーをあまり重視しないかのような発言にも表れている。しかしながら、ユーザーはどんな人にもすべての情報をシェアしてもいいとは思っておらず、自分の友人になら、ここまで、知らない人にはここまで、というように、人によって情報のシェアの仕方には違いがある。Facebookでもそのように情報をどこまでシェアするかは、自分である程度コントロールすることができる。しかし、今回のように、Facebook側で新たなシステムを作り、ユーザーが知らないうちに他人とシェアしたくない情報がシェアされてしまうところに大きな問題が発生している。

Facebook側も今回の変更に対するユーザーの反発を見て対応に動き、5月26日には、プライバシー管理方法について変更を加えた。この変更でユーザーがプライバシー管理をするための手順はかなり簡素化され、その点については評価されている。しかし、何もしなければ知らないうちに情報がシェアされてしまう、という部分についての変更はなく、プラバシー専門家を含め、ユーザーからはまだ問題が解決されていないと指摘されている。Facebookにとって、このようなプライバシー問題は今回初めてではなく、以前にも何回か起こっている。本来ならば事前にユーザーに許可を得てシステムを変更すべきところを、いつも勝手に変更を実施し、問題があると指摘されたら謝るという姿勢に問題があるようだ。

Facebookが何故このようにユーザーの個人情報を外部にまでシェアしようとするかといえば、それは彼らのビジネスにとって重要だからだ。Facebookはユーザーにとって、無料のサービスなので、ユーザー以外から収入を得る必要がある。その収入源は基本的に広告収入だ。広告は、どんなユーザーがその広告を見てくれるかによって、その効果に大きな違いがある。あるユーザーがどんなものに興味を持っている人かがわかれば、その興味を持ったものについての広告を出せば、効果が大きいので、広告主からより高い広告費を取ることができる。いわゆるターゲット広告だ。

SNSで、ユーザーはプロファイルに自分のことをいろいろ書いているし、何が好きか、「Like」ボタンを使って情報を発信している、まさしくターゲット広告のための情報の宝庫だ。このような情報をうまくビジネスにつなげようというのが、Facebookがやろうとしていることであり、ビジネスとして当然考えるべきこととも言える。一方、ユーザーの側も、どうせ広告を見せられるのであれば、自分の興味のあるものの広告を見せてもらったほうが役に立つ場合が多いので、歓迎する向きも多いかもしれない。

したがって、Facebookのやろうとしていることは、決してユーザーに一方的にマイナスのものというわけではない。ただ、そのやり方が、ユーザーに十分な情報を知らせず、一方的にプライバシーに関する方針を変更し、何もしないと情報が勝手にどこかに伝えられてしまうという点、そして、それに参加したくない場合、その対応手順が複雑すぎる点が問題なわけだ。

Facebookは今回の件もあり、今後プライバシーに関する変更については、注意するだろうが、それでも過去のFacebookの歴史を見ると、同じようなことがまた起こりかねない。したがって、プライバシーが心配な人は、Facebookに提供する情報を、プロファイル、Likeを含め、制限する必要があるだろう。それでも心配な人はFacebookのようなSNSへの参加を見合わせる必要がある。このコラムはFacebookを中心に書いているが、日本のMixiを含め、他のSNSも大なり小なり同じような状況なので、注意する必要がある。

ただ、FacebookをはじめとするSNSは、遠くにいる友人の様子を知ったり、自分の様子を知らせたりできるし、昔の友人を見つけたり、見つけられたりして、旧交を温めたりできるなど、多くのいい面も持っている。SNSサイトのおかげで、昔の知り合いが見つかったという人は、ユーザーの40%を越えているという調査結果もある。私も最近、昔ニューヨークの小学校で一緒だった友人を見つけることができた。このような昔の知り合いを見つけたり、見つけられたりするためには、プロファイルにある程度の情報を一般公開しておかないと、出来ない。SNSのいろいろなプラス面、マイナス面を十分考え、個人個人がどのように使うか、または使わないか、プライバシーとのバランスを考えながら判断していく必要がある。

  黒田 豊

(2010年6月)

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