インターネット利用の発展

新年明けましておめでとうございます。

昨年1月のこのコーナーでは、1996年をインターネット戦略を策定、実行すべき年であると述べた。皆さんの会社、組織ではインターネット戦略を策定し、実行をはじめたであろうか? 米国では既に1995年の段階でインターネットに対する姿勢がかたまり、実行に移している。日本でも、コンピューターや通信業界に身をおく企業はインターネット戦略がほぼ確立されて、実行に移されてきている段階ではないだろうか? ただし、各社足並みは必ずしもそろっているとはいいがたく、インターネット関連で色々な事業や実験を開始しているものの、インターネット関連のビジネスを整理した形でのインターネット戦略を持っている企業は、以外と少ない気もする。もう一度、インターネット戦略という形で整理し直す必要があると思う。

コンピューターや通信業界以外の日本の一般企業ではどうか?昨年末に日本の色々な方々とお話した限りでは、ごく一部の先進的なユーザーを除き、インターネット戦略策定とはまだまだいかない状況のようである。いまだにインターネットについて半信半疑な人達がいたり、インターネットといえばWWWの事と思い、電子メールを使っていなかったりと、残念ながらお寒い状況のようである。もう何回も書いたとおり、インターネットはあらゆる企業の将来に大きな影響を与えるものである。今年こそ、是非インターネット戦略を策定し、実行に移してほしいものである。

インターネット戦略策定にあたっては、1年前のこのコラムを見ていただいても多少役に立つであろうし、拙著“インターネット・ワールド”(丸善ライブラリー)も参考になると思う。ここではその繰り返しを避け、ここ数年の米国でのインターネット利用の発展の流れを振り返って見たい。

米国でのインターネット利用のまず最初は電子メールの利用からである。こんな事は当り前であろうと、今まであまり電子メールのことを書いていなかったが、つい最近日本の方々とお話をしたときに、電子メールを使わず、WWWだけを利用している企業(特に中小企業)が以外と多いと聞いたので、ここから話を始める。

米国ではインターネットが騒がれる前から、会社ではパソコンが個人に使われ、それらが構内接続(LAN-Local Area Network)され、社内で電子メールが行きかっていた。そこにインターネットが登場し、この電子メール利用が、社内だけでなく、インターネットにつながる世界中の人々に拡大された訳である。このことにより、顧客とのやりとり、取引き業者とのやりとりが飛躍的に便利で早いものとなった。

電子メールは最も基本的なインターネット・アプリケーションであるが、極めて簡単で安価に導入出来る上にその効用は以外と大きく、これを飛ばしてWWWのみを使うという手はない。相手がいない時でも情報伝達出来る、来た電子メールにコメント/返事をつけて転送/返送が簡単に出来る、多数の人に同時にメールを送れる、記録が残る、ワープロ文書がそのまま送れ、送り先でそのまま使用できる、等々、企業活動の効率化には欠かせない。日本ではLANによる社内電子メールがないうちにインターネットの波が押し寄せてきたので、電子メールを使う前にWWWだけを使うといった、米国の現状から考えると奇妙な現象が起こっているようだが、もし、あなたの企業がこれに該当するようであったら、電子メールの利用を早急に検討、実施すべきである。

電子メール・アプリケーションの応用としての各種ニュース・グループの活用も、特に企業の情報システム部門では、コンピューターのハードウェア、ソフトウェアの導入や問題解決に、その利用が常識化している。

米国でのインターネット利用の次の段階はWWWを利用した情報発信と外部情報の利用である。会社の概要、製品/サービス内容、財務報告等をWWWで情報発信する、おなじみのインターネットの使い方である。これはもはや企業活動をする上で、当たり前の事となっており、企業案内パンフレット等を作るのと同じように必須のものである。

日本でも大手企業はほとんどすべてこの段階は過ぎていると思うが、中小企業にとっても、もう必須といってよい時期に来ている。問題はこの段階まで来た日本企業で、ここでとまってしまっているところが結構多いことである。この段階はインターネット利用の終着駅などでは全くない。むしろ最初の門をくぐった程度である事を理解する必要がある。

米国でその次にはじまったのはインターネットを利用した商品の販売、いわゆるエレクトロニック・コマースである。これは1995年秋頃米国でホットな話題であったが、一部を除き、必ずしも成功しているとはいえず、いずれエレクトロニック・コマースの時代は来るにしても、まだ数年先という現実を理解し、ほとんどの企業は現在はあまり力を入れていない。むしろ販売の前段階であるマーケティングやそのあと段階であるサポートにインターネット利用が見られる。エレクトロニック・コマースについては、昨年11月のレポートも参考にしていただければ幸いである。

そこで、多くの企業はエレクトロニック・コマースから、インターネットの社内利用、イントラネットへとその焦点を移した(イントラネットについては昨年3月にレポートしている)。この流れはインターネット関連のメーカー側にも大きな影響を与え、各社ともイントラネットに焦点を置いた製品を次々に発表、出荷している。調査会社の市場調査結果や予測を見ても、イントラネット関連分野が外部向けのインターネット関連分野より、はるかに大きな市場になると見られている。社内ネットワーク(専用回線など)を使いながら、インターネット技術を利用したイントラネットは、セキュリティの不安も少なく、企業がクライアント・サーバー・システムの発展形として期待し、次々と導入している。

このイントラネットの動きのあとを追って、さらに各企業が力を入れはじめたものに特定相手(特定顧客、取引先など)との通信を目的としたインターネットの利用がある。これをエキストラネットと呼ぶ人もいるようだが、米国ではエキストラネットという言葉をイントラネットに対する言葉として、もっと広い範囲のものを含む言い方もあり、まだ流動的なので、この言葉を使うのはとりあえず差し控えることにする。

イントラネット、および特定相手との通信を目的としたインターネット利用に合わせ、インターネット・サービス・プロバイダー側もインターネット全体の中の一部を、管理出来る単位として、セキュリティも完備した、バーチャル・プライベート・ネットワークのサービスを始めつつある。

ここまでは、いずれも電子メール、ファイル転送、それにWWWホームページをブラウザーを使って見るというインターネットの使い方の応用であるが、最近、新しいインターネットの使い方が注目され始めている。それは、WWWのホームページを誰かに見てもらうのを待っているのではなく、WWW側からユーザーにテレビのようにブロードキャストする方法である。これについては、また別の機会にお話する事にしたい。

米国でのインターネット利用の発展経過としては、大体こんなところであろうか。米国でも企業や業種それぞれでインターネット利用の進め方は違うし、ビジネス形態が異なれば、それが当然である。日本の企業にしても、各業種それぞれ、また、各社それぞれでインターネットの使い方が異なるのは当然である。だから各社それぞれのインターネット戦略が必要なわけである。その戦略策定および実施に米国でのインターネットの使われ方の発展経緯が多少なりとも参考になれば幸いである。

  黒田 豊

(1997年1月)

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