SNSあれこれ
インターネット利用者で、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を使っている人は多い。なかでも一番多いのはFacebookだが、それ以外にも、Twitter、さらにはLinkedInを使っている人もいるだろう。日本ではMixiが以前から有名だ。そして、昨年、GoogleがSNSに3度目の挑戦として、Google+を出してきた。そして、それだけでなく、実は他にもPinterestなど、新しいSNSが次第に人気を集め始めている。
Facebookについては、株式上場予定が発表され、少し前にもこのコラムで書いたが、世界最大のSNSで、ユーザー数は8.45億人。Facebookが政府規制により使えない中国をのぞく、世界のインターネット・ユーザー16億人の半分以上がすでにFacebookを使っている。基本的に本名を使って利用するので、インターネットの匿名性に慣れていた日本人には、なかなか広がらなかったが、昨年の東日本大震災のときに、実名で人の安否を知らせ合うなどに使われ、また、フェースブックの創設者を題材にした映画も上映されて知名度があがり、ようやく日本でも1000万ユーザーを超えた。
Facebookは、いまや個人の交流サイトとしてだけでなく、企業が宣伝やブランド・イメージ高揚に使う場合も増えている。Facebookで、会社や製品をLike(日本語では「いいね」)してもらうことにより、ユーザーへの商品・サービスのプロモーションにも使われている。ユーザーも会社から、いろいろな特典を得ることができるので、その会社をLikeする人も少なくない。
広告を出す企業も、ユーザーのプロフィールを知った上で、関連する広告を出せば、その効果は、無差別に出す広告に比べ、はるかに有効だ。そのため、Facebookへの広告は、どんどん拡大している。また、人と人とのつながりを生かした広告は、自分の友達がいいと言ってくれるものなので、これも単純に広告を見せるのに比べ、その広告効果は高い。
また、これまで、何か情報を見つけるときには、サーチエンジンを使って情報を見つける場合が多かったが、これで見つけた情報は、一般的な情報のため、それよりも自分のFacebookの知り合いがどう思っているかという情報が貴重になってきている。たとえば、近くのレストランをサーチした場合、店のリストは出てくるが、どの店がいいか、わからない。そこで友人からの情報が重要になってくる。
しかしながらFacebookは、スマートフォンを中心に拡大するモバイル分野では、まだ十分な地位を確立していない。そこで、Facebookは先月、まだ創業2年という若いベンチャー企業ながら3000万以上のメンバーを集めている、モバイルの写真シェア・サイトであるInstagramを買収し、モバイル分野でのビジネス拡大を狙っている。
Google+は、発展を続けるFacebookに対抗して昨年Googleが出してきたが、開始からまだ半年余りにもかかわらず、すでにメンバー数は1億人と、一見順調に拡大しているように見える。しかし、その実態は、まだ本格的に市場で受け入れられているとは、必ずしも言えない状況だ。それは、ユーザーがどれくらいの時間、Google+を使っているかを見ると、平均して1ヶ月にわずか3分という短いものだからだ。Googleが新しいSNSを始めたので、とりあえず登録しておこう、という人は結構いるものの、まだほとんど使われていない、というのが実態だ。ちなみに、Facebookの一人当たり使用時間は月平均6時間45分だ。
しかし、そんなGoogle+の中でも、よく使われている機能がある。それは、Hangoutsという、10人までのビデオ会議に使えるアプリケーションだ。無料で、特別な機器を必要とせず、パソコンでも、スマートフォンでも、タブレットでも使えるのが、人気の理由だ。
また、Googleは、Google+のSNS機能を、他のGoogleのサービスと連携させようとしている。Googleは、Gmail、YouTubeなど、人気の高いサービスをいくつも持っているので、これらと連携すれば、他のSNSにないユニークなサービスが提供でき、Google+の人気も向上する可能性がある。ただ、プライバシーが気になる人は、Googleがこのようにいろいろなサービスを連携させ、個人のプライバシーを侵害されるのではないかと、最近Googleが発表した、異なるサービス間の情報を統合するという方針変更にも反対しているので、これは両刃の剣でもある。
Twitterは、SNSの範疇に含まれるものの、FacebookやGoogle+とは、かなり異なる性格のもので、競合はあまり起こっていない。Twitterは、いわゆるミニブログと言われるもので、140文字以内のTweet(つぶやき)をユーザーが発信するものだが、Twitterの特徴は、そのリアルタイム性にある。その場で起こっていることをつぶやくので、その状況がつぶさに、リアルタイムにわかる。災害時に現場の状況を伝えたり、特定の場所の混雑状況などを伝えるのに便利だ。
また、テレビ番組などでは、それを見ている人の反応をテレビ番組に反映させたり、テレビ番組のどの部分に人気があるか、などもリアルタイムでわかるので、番組に対する評価を見るための分析にも使われている。ちなみに、Twitterの場合は、短いつぶやきしかできないので、月あたりのユーザーの利用時間は平均21分と、それほど長くはない。
LinkedInは、仕事を持つ人が、自分の仕事や経歴を知らせたり、相手のそれを知るために使っている。これは、基本的にビジネスにかかわる情報のやりとりが中心なので、登録するプロフィール情報、アップする情報、その使われ方などがFacebookやGoogle+とは異なっているので、これも競合の少ないユニークなサービスとして米国で広がっている。米国の場合、転職する場合も多く、折角どこかで一緒に仕事をした人でも、会社が変わってしまうと、メールアドレスもわからなくなって、音信不通になってしまう場合が多い。しかし、LinkedInに登録しておけば、知人が会社を変わったときも、LinkedInが知らせてくれるので、便利だ。
さて、ここまでは、ある程度名前の通っているSNSだが、最近急激に伸びてきている、他のSNSについても、簡単に紹介しておこう。その一つPinterestは、メンバーがいろいろな写真をシェアし、それにいろいろな人がコメントする、というもので、主に食べ物、ファッション、クラフトなどの写真が多い。このサイトは2年ほど前に始まったばかりだが、ある統計によると、Facebook、Twitterに次ぐ、SNSで3番目の人気サイトになったとの結果も出ている。
Tumblrは、個人が写真であれ、文章であれ、何でも世の中にシェアできるようにしてあるサイトで、月あたりの使用時間が平均89分と、Facebookに次ぎ、Pinterestと同じ長さだ。Skoutはブラウザーを最初に開発したことで有名なMark Andreesenの会社が最近$22 mil.投資したこと知名度が上がったサイトで、近くにいる人と友達になるためのものだ。
まだまだいろいろとユニークなSNSサイトがあるが、そんなにたくさんのSNSサイトに対応するユーザーも大変だ。しかし、ご心配なく。たくさんのSNSサイトとのやりとりを効率よくするためのツールとして、Hootsuite、Seesmicなども世の中に存在するので、たくさんのSNSに参加している人は、これらのツールを使うことも、一つの手だろう。
いずれにしても、SNSは今後、それ自身の発展にとどまらず、テレビの世界ではSocial TVという概念が広がってきており、また、モバイルでのSNS利用は、ロケーション情報を活用しながら、さらに広がっていくだろう。SNSがインターネットの主流として、さらに発展していくことは、間違いないだろう。
黒田 豊
(2012年5月)
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