コーポレート・ポータル
今年3月のレポートで、インターネット・ポータルについて書き、そのときの最後に、企業が社内向けのイントラネットの入り口として、ポータルの概念を取り入れようとしていると述べた。これがコーポレート・ポータルであり、今月はこれについて書いてみることにする。
米国でのインターネット利用の発展は、まず電子メールやファイル転送、Webによる情報提供からイントラネット、エクストラネット、そしてインターネット・コマースへと発展してきており、現在インターネット・コマースの広がりが世の中を変えるほどの大きなものとなってきているが、すでに通りすぎたイントラネットについても、このコーポレート・ポータルの動きが出てきて、また活発になってきている。
米国では、主な企業はイントラネットの構築を3-4年前に終えており、日本では必ずしも多くの企業がそこまで進んでいるとは言えない状況にあるが、イントラネットのなかでも、単にリモートアクセス(遠隔地にある支店や営業所からの通信や社員が自宅や出張先からの通信に使う)目的に使うのではなく、インターネット技術を利用したWebベースの社内情報共有のイントラネットについての動きが、今回のコーポレート・ポータルにつながってきている。
このようなイントラネットは、企業の仕事の効率化やコスト削減に大きく貢献しており、例えば、Hewlett
Packard(HP)社は、紙のフォームをイントラネットに変換して一般管理費を売上高の30%から17%に大幅削減したと既に数年前に社長自ら述べている。イントラネットには、このような大幅なコスト削減効果に加え、使い易い共通のWebインターフェースによるユーザーの生産性の向上も上げられる。さらに、Webのサーチ機能等により、情報の検索時間も大幅に短縮できる、最新の情報をいつでも更新できる等、そのメリットは大きい。そして、これらの機能が最近さらに発展してきたわけである。
インターネットに入る最初の入り口、玄関というような意味でポータルという言葉がよく使われており、おなじみのYahooなどがそれにあたるが、Yahooを例にとって考えて見ると、最初は単なる世界中のホームページの索引のようなものであったが、その後、キーワードでホームページを検索するサーチエンジンが加わり、さらに、最新のニュース、天気、株価情報などのコンテンツもそろえ、インターネット上で情報を探そうと思えば、ここへ来ればそれが簡単に出来るようになった。
これと同じように、このポータルという概念を社内のイントラネットに応用し、社員が必要な情報をうまくまとめた社内用のポータルサイトを作ろうというのが、コーポレート・ポータルである。イントラネット用のホームページはもともとそのような思想で設計されていたと思うが、それに既存データベースへのアクセス、ERPへの接続、インターネット経由による外部情報などを加えて、より使いやすいものにしようというわけである。
コーポレート・ポータルの役割としては、イントラネット上の情報の検索・サーチ、インターネット上の情報の検索・サーチ、データベース検索(Webフォーマット以外のもの)、ナレッジ・マネジメント(Knowledge
Management)、ドキュメント管理、ERPシステムへの入り口、主な適用業務への入り口等があげられる。個別機能としては、定型、および非定型情報の検索、幅広いデータタイプへの対応、パーソナライゼーション(フィルターのカスタマイゼーションなど)、新しい情報の自動収集、新しい情報を入手したときのユーザーへの自動通知、情報の索引付け、階層化などがあげられる。
コーポレート・ポータルを作って得られるメリットとしては、情報を必要としている社員が、迅速に情報の検索、サーチを行える、情報を探すための時間が大幅に削減できる、今までのやり方では見つからなかった情報が見つかり、それによって業務が改善する(例えば、セールスマンが必要としている情報など)、社員が同じことを二重にしなくても済む、結果として、社員の、そして会社全体の生産性が上がる、などが考えられる。
コーポレート・ポータル作成のためのソフトウェア・ツールも市場に出始めているが、それぞれ起源が異なり、特徴も大きく異なる。コーポレート・ポータル用として開発されたソフトウェアに加え、あらゆる方面のソフトウェアがコーポレート・ポータルをめざして機能を加え、名前もコーポレート・ポータル・ソフトウェアと呼んでいる。しかし、いずれの製品もその起源となる製品の強みは持つものの、コーポレート・ポータルとしての機能を幅広く持っているものはほとんどなく、その用途に合わせて、十分注意して製品を選ぶ必要がある。具体的には、ナレッジ・マネジメント系、ビジネス・インテリジェンス(OLAP)系、情報サーチ系、Webコンテンツ・マネジメント系、ドキュメント管理系、グループウェア系、などがある。また、ERPベンダー、CRMベンダー、データベース・ベンダーなどもポータル・ソフトウェアとしての名乗りを上げているが、コーポレート・ポータルとしての機能はまだ十分そろっていない。
製品としてのコーポレート・ポータルの行方はまだ未知数だが、社内イントラネット用の入り口をひとつにし、そこからあらゆる仕事ができるようにするという考え方は、今後イントラネットの構築、改良を行う上で、重要な考え方であることには間違いない。
黒田 豊
(1999年10月)
ご感想をお待ちしています。送り先はここ。
戻る