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コロナ後の働き方の変化と、それに合わせ進化するZoom

新型コロナウィルスのパンデミックが始まって早や1年半。今年初めからワクチン接種も始まり、少なくともワクチン接種が広まった国々ではコロナ禍が終息に向かうと思われたが、感染力の強いデルタ株の出現、ワクチン接種をためらう人たちの存在もあり、いまだ十分終息せず、不安の残る状況が続いている。それでもワクチン接種者の比率が高い地域では、レストランなどもコロナ禍以前の活況を取り戻しており、パンデミックが終息に向かっていることがうかがえるのは幸いだ。

そんな中、コロナ後の会社での人々の働き方の検討も、今年春ごろから動き始めている。コロナ禍が始まった昨年春、カリフォルニアでは、不要不急の外出や出勤はしないようにとの指示が出て、一斉に在宅勤務、リモートワークが始まった。日本ではこれまでリモートワークを全くしていなかった企業も多く、リモートワークのための情報通信インフラや、リモートワークする社員の管理評価など、多くの問題をかかえ、リモートワークへの移行に時間がかかったケースも多かったようだが、やってみたら結構できる、と感じた会社や人々も結構いたのではないか思う。

カリフォルニアでは、以前から何等かの形でリモートワークを実施していた企業も多く、リモートワークへの全面移行も、比較的スムーズに行われたように感じる。それでも、月に一度も会社に出てこない、いわゆる全面リモートワークへの移行は、会社および社員に大きな変化をもたらした。AppleやGoogleなどの大手企業は、昨年のある時点で、少なくとも1年はオフィスに出てこなくてもいい、と発表したため、しばらくは物価の高いシリコンバレーを離れ、自然が豊富で物価も安い地域へ引っ越した人もいる。

このような、全面リモートワーク状態から、コロナが終息したのち、どのような勤務体制を希望するかに関する調査も、いろいろ行われている。それを見ると、会社や管理者側の考え方と、一般社員の考え方に大きな違いがあることが見て取れる。まず、会社や管理者側は、基本的にコロナ後は、出来るだけオフィスに出てきてほしいと思っている。その理由はいろいろあるが、同じ場所で働いていて、休憩する場所などを含め、いろいろなところでの何気ない会話から、新しい発想が生まれたり、イノベーションが起こることを期待しているという点がある。いちいちEメールを送ったり、オンライン会議をセットしなくても、ちょっとその人の席に行って、何かを伝えたり相談したりするほうが簡単で効率がいい、ということもある。また、会社や管理者側から見ると、社員がオフィスでどのように勤務しているか、勤務態度などが見えるのも安心だろう。リモートワークだと、その会社の仕事をするだけでなく、別な仕事をしている人がいることもあり、仕事効率や作業量に問題が発生する可能性もある。特に日本では、これらの理由から、会社および管理者側は、リモートワークではなく、オフィス勤務を期待することが多いようだ。そのため、リモートワークを少しやってみたけれども、すでに通常のオフィス勤務に戻してしまった企業も少なくないようだ。

一方、一般社員側の意識はかなり異なる。リモートワークをやってみると、仲間と直接会って話せないなどの不便はあるものの、その多くはEメールや社内SNS、オンライン会議などで代替可能であり、むしろ通勤時間の無駄が省け、自分で自由に時間がコントロールでき、さらに自然豊かな物価も安い環境で生活することもできる、いわゆるQuality of Lifeが向上するというメリットのほうを、多く感じている人が多いようだ。コロナ後の勤務体制に関する、あるアンケート調査によると、100%オフィスに戻って仕事をしたい、という人はベビーブーマー世代でも数%しかなく、若いミレニアル世代では、ほぼゼロだ。逆に20%ほどの人たちは、ずっとリモートワークだけでもいい、と回答している。残りの多くの人たちは、何日かはオフィスで、何日かはリモートで、というハイブリッド型を希望している。

このようなハイブリッド型勤務体制にするにしても、会社側はリモートワークを週に1回程度を希望しているのに対し、一般社員側は少なくとも週2回はリモートワークしたい、という結果が出ている。このような状況を踏まえ、シリコンバレーの各企業は、コロナ後はハイブリッド型の勤務にする方向で考えている。AppleやGoogleは、週3回はオフィスに出社、あとの2回はオフィスに来ても、別な場所からリモートワークでもいい、という方向になっている。米国では、社員が転職することはよくあることなので、社員に働きやすい環境を作らないと、すぐに退職してしまい、別な会社に移ってしまう。特にIT系のエンジニアなどは、その傾向が強いので、会社としても、そのような優秀な人材に、できるだけ長くいてもらうため、社員の意見を極力尊重しようとしている。

さて、このようなコロナ後の世界が近づく中、この1年半、急激に業績を伸ばしてきた、ビデオ会議システム大手のZoomは、どのように対応しようとしているのだろうか。まず、Zoomのこれまでの業績は、コロナ禍の影響で、大きく伸びている。最新の四半期では売上が10億ドルを超え、すでに2019年に比べ3倍と、大きく伸びていた昨年同期に比べても、54%伸びている。Zoomは今やビデオ会議システムの代名詞のようになっている。ずっと以前、資料をコピーすることを「ゼロックスする」と言ったり、いまでも情報をサーチするときに「グーグる」などと言うように、ビデオ会議するときに「Zoomしましょう」と言う人も、少なくない。そんなZoomだが、コロナ禍が終息すれば、その使われ方が減ることは、当然予想している。

売上、利益とも大きく伸び、資金も豊富に持つZoomは、そのようなコロナ後を見据え、業務拡大を狙っている。それは、コロナ後に到来すると考えられる、ハイブリッド型勤務に対応するものだ。その一つはZoom Room。これは、物理的な会議室に必要となる大型ディスプレイ等(Zoom提携企業のもの)を入れ、別の会議室とつなげるだけでなく、個人がリモートワークからも、うまくミーティングに参加できるように、各種コラボレーション機能を加えたもので、Zoomがクラウド経由のサービスとして提供する。これは、会社の会議システムとしてだけでなく、教育現場でも、設備を整えれば、教室からのハイブリッド授業にも使えるようだ。また、オフィス内に隔離されたブースを構築するRoom社と提携し、Room for Zoomという、オフィス内で他の人に迷惑にならないよう、Zoomを使用するためのもの(Video Podなどと言われる)も最近提供を始めた。これ以外にも、Zoomはコロナ後の新しい環境に合わせたサービス、新機能を検討しているようだ。

Zoom以外でも、MicrosoftやGoogleなど、ビデオ会議システムを提供しているところは、同様にこれからのハイブリッド型勤務に対する新たな製品・サービスを打ち出してくるだろうし、そのようなものを提供するスタートアップ企業も出てくるに違いない。世の中が変革するときは、まさにイノベーションが起こり、新しい製品・サービスを提供する絶好の機会だ。

  黒田 豊


(2021年10月)

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