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仮想通貨、ICO、ブロックチェーン

業界関係者なら、もちろん何のことかわかるだろうが、一般の人には耳慣れない言葉が並んでいるかもしれない。仮想通貨については、テレビや新聞等でもよく報道されるので、知っている人も多いだろうが、円やドルといった実際の通貨ではなく、電子的に作られた仮想の通貨だ。一番有名なものはビットコインで、この名前は、ほとんどの人が聞いたことがあるだろう。

次のICOは、Initial Coin Offeringの略だ。ベンチャー企業(最近は、日本でも株式上場をめざすようなベンチャー企業は、スタートアップ企業と呼ばれている)が資金調達のため、株式市場に上場する場合、IPO (Initial Public offering)というが、これに似たものだ。IPOでは、出資者は円やドルなどの通常通貨を払い込み、その会社の株式を入手し、その会社の一部を所有することになる。ICOでは、集めるのがビットコインのような仮想通貨で、出資者に対して提供されるのはトークンと言われる、その会社に関連した商品やサービス購入などに使えるクーポンのようなものが多い。株式ではないので、その会社の所有者になるわけではない。

最後のブロックチェーンというのは、仮想通貨を実現するためのベースとなる技術の名前だ。その詳しい説明は割愛するが、情報を中央集中的に一ヶ所で管理するのではなく、多くの人たちが分散して情報を保有して管理するのが特徴で、セキュリティ面で強いと言われている。

さて、仮想通貨が話題になりはじめたのは、2008年にビットコインに関するWhite Paperが「サトシ ナカモト」(日本人の名前だが、実際どんな人またはグループかは不明)の名前で出され、それを実際に実現する会社が出始めたころで、2013年あたりから、本格的に世の中で話題になってきた。この10月31日は、その10周年に当たった。仮想通貨は特定の国の政府に依存しないものなので、どこの政府の意図にも影響されず、各国間の資金移動なども容易になるといったメリットがあり、今後大きく発展するのではないかと言われた。

2014年に発生した、数百億円に及ぶビットコインが喪失したマウントゴックス事件がおき、ビットコインの評価はしばらく低迷していたが、その後じわじわと上昇し、ビットコインを求める人が増え、ビットコインの取引量は急拡大。2017年には1ビットコインあたりのドル価格が1年間で約20倍になるという異常な急騰をした。その結果、仮想通貨としての意味よりも、単なる投機対象となってしまった。逆に、仮想通貨としては、あまりに価値の変動が大きいので、その役目を十分果たせないまま、今日まで来ている。急騰したビットコインの価格は、2018年1月に発生したコインチェックでの仮想通貨(ビットコインではなく、別なNEMという仮想通貨)盗難事件もあり、さすがに続かず、2017年末のピーク時1ビットコイン当たり約$20,000弱から、いまは$4,000あたりまで下がってきている。ちなみに、ビットコインだけでなく、他にも次々と仮想通貨は生まれ、いまや4000を超えている。ただ、ものによっては簡単にドルなど実通貨に変換できないものもあり、このような仮想通貨を持つことは、かなりリスクが伴う。本来は、国の財政状況などによるその国の通貨価値の大きな変動に対応するための仮想通貨が、逆に投機対象になったため、その役割を果たせていないのが現状だ。

ビットコインが広がり始めたころは、ビットコインでの支払いを受け付ける企業も増え、例えば大手パソコン企業のDellや、インターネット有力旅行会社Expediaもビットコインでの支払いを受け付けていたが、Dellは2017年に、Expediaも今年5月に中止している。仮想通貨の価格が安定し、本来の役割を果たすときがくるかどうかは、今後の動向を十分見極める必要がある。ビットコインのような、どこの国や企業も保証していないものは、このような状況だが、日本では銀行が円と1対1で交換を保証する仮想通貨の実験も始めており、キャッシュレス社会に向けて、このような閉じた世界での仮想通貨が使われる可能性はあるだろう。

さて、ICOだが、これもビットコインを中心とした仮想通貨のバブル的な状況に合わせ、2017年には大きく発展した。市場規模は合計で40億ドルにもなり、その多くは2017年に行われたものだ。しかし、企業が株式上場(IPO)するには、米国でいえば、証券取引委員会(SEC)による厳しい審査を通る必要があるのに対し、ICOでは、最近まで何の審査もなく行われていた。そのため、もともとビジネスなど行うつもりもなく、単にお金を得ようとICOを行った、いわゆる詐欺のようなものもたくさん発生した。そのため米国では、ICOにもSECが介入し、厳しい審査をするようになったので、簡単にICOはできなくなった。また、ICOに参加してビットコインなどを出資した人がもらえるトークンは、交換所で実貨幣に交換できないものも多く、持っていても何の価値にもならない場合も少なくない。このようなICOの問題点がいろいろ見えてきたので、いまはICOを試みてもその半分以上は目的の出資を得られなくなったのが現状だ。

ただ、世界的にみると、まだICOが無法地帯になっているところも少なくない。なぜこのような信頼性の低いICOに多くの人がビットコインなどで投資したのか、私は最初から不思議に思っていたが、おそらくビットコインの急騰でにわか金持ちになった人達が、さらにICOで資金調達する企業に投資して儲けようと考えたため、このような信頼性の低いものに投資したのだろうと想像される。もう一つは、正式な株式上場(IPO)の場合、一般の人は簡単にその最初の出資には参加できないが、ICOの場合は一般の人でも簡単に参加可能だったことが大きな原因の一つだろう。

このように信頼を失ってきたICOだが、それに似て非なるものとして、STO(Security Token Offering)というものが、新たに浮上してきた。これは、ICOが出資と引き換えにトークンを提供するものに対し、STOでは、その会社の売上や資本にリンクしたものをもらえる、という点が異なる。ただ、米国の場合、このようなものは株式発行と同様のSEC審査を受けることになるので、簡単にはいかない。しかし他の国ではこれがもっと簡単な方法で可能になり、ICOに比べれば、詐欺のような問題が減るという利点もありそうだ。STOがうまく広がれば、スタートアップ企業だけでなく、中小企業の追加資金調達の道も開ける可能性がある。まだ始まったばかりのものなので、今後どうなっていくか、注目される。

さて、最後のブロックチェーンだが、これは単なる技術なので、一般の人たちの目に触れることはほとんどないが、この技術は仮想通貨を実現するためだけでなく、あらゆるトランザクション処理を強力なセキュリティをもって実現できる可能性を持っている。たとえば、2者間の送金、製品の開発から流通までの経緯、貴金属の採掘されたときから誰の手から手に渡ったかなどの記録が、強力なセキュリティのもと、記録できる機能を持っている。そのため、現在行われているあらゆるビジネス・トランザクション処理において、この技術を使って効率化が図れる可能性は十分ある。実際、世界中のダイヤモンドの採掘から販売の経緯をすべて記録しようとしている会社も出てきている。

1つ大きな問題は、仮想貨幣が数千種類あるように、ブロックチェーンにもたくさんの異なる種類のものがあり、現在はそれぞれに互換性がないことだ。したがって、1つの適用業務に、ある特定の会社がブロックチェーンを使っている場合はよいが、複数の会社がからみ、複数の適用業務に利用するとなると、統一した、あるいは互換性のあるブロックチェーンを使う必要がある。まだ実験的な使われ方のものが多く、また、1秒間に処理可能なトランザクションが7と遅く(クレジットカード会社のトランザクション処理速度は、1秒間に約65,000と言われている)、今後どれくらい広がっていくかは、さらなる技術の発展を待つ必要がある。

仮想通貨、ICO、ブロックチェーン。耳慣れないものかもしれないが、ふとしたことで、かかわる可能性も十分あるものだ。仮想通貨とICOについては、個人レベルでも、誰かがそのようなものの利用、参加を勧めてくるかもしれない。そのときには、簡単に飛びつく前に、それがどんなものか、どんなリスク、意味があるかを十分精査する必要がある。また、ビジネスの世界では、ブロックチェーン技術を使えば、効率化できる可能性のあるものも多く、それによって業界構造が大きく変わる可能性もある。実際、金融業界は、その可能性があり、関係者はその分析を急いでいる。今回取り上げたものを含め、デジタル革命により、いろいろな業界に大きな変化がおき、既存企業は、それにいかに早く対応し、デジタル・トランスフォーメーションを行うかが、その生死にかかわる問題となってきている。

  黒田 豊


(2018年12月)

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