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今度は本物か、Apple Watchのヘルスケア機能

9月12日、Appleの秋の新製品発表があった。注目されていたのは昨年発売されたiPhone Xの後継機iPhone XSだが、私は別なものに注目した。それはApple Watchシリーズ4だ。Appleも今回の発表に力を入れていた模様で、発表会の最初の30分以上を、Apple Watchに費やしていた。

Apple Watchの初版は2015年4月に発売され、Appleが発売した最初のウェアラブル・デバイスということで、多くの人が注目していた。なかでも私が注目していたのは、そのヘルスケア機能だ。それはAppleが、Fitbitなど他のフィットネス系デバイスと異なり、本格的なヘルスケア機能を持って登場するとのうわさがあったからだ。

しかし、ふたを開けてみると、それほど注目に値するヘルスケア機能は見当たらなかった。当時のうわさによると、もともといろいろなヘルスケア機能を入れようとしていたが、事前のテストで十分な信頼性が得られず、最初のバージョンでは多くのヘルスケア機能が落とされて発売された、という話だった。そのため、私も最初はApple Watchを購入しようと思っていたが、思いとどまり、次のバージョンが出るのを待っていた。

そしてApple Watch シリーズ2が発売されたのが2016年9月。しかし、ここでもヘルスケア機能として目立ったものは見当たらなかった。2017年9月に発売されたApple Watch シリーズ3も同様だった。そして今回のApple Watch シリーズ 4の発表だ。何度も裏切られたので、もうあまり期待していなかったのだが、今回はヘルスケア機能が大きく一歩前進した感がある。

これまで、Apple Watchはまずコネクティビティ機能ということで、電話のやりとりなどをWatchでできるようにし、さらにフィットネス機能として、他社製品にある歩数計やカロリー消費などをそろえてきた。そして、ヘルスケア機能については、今回の発表で充実したものとなり、ようやく機能の3本柱がそろってきた、という感がある。

では、具体的にApple Watchシリーズ4で追加されたヘルスケア機能を見てみよう。ひとつは脈(心拍数)の把握があるが、単に数値がわかるだけでなく、それが高すぎたり、低く過ぎたりした場合、警告を出してくれる。さらに脈のリズムについても分析し、不整脈などがあると警告してくれる。

次に大きな機能として、転倒検知がある。転倒して意識を失ったり、動けなくなりして、助けを呼ぶ電話までたどり着けないような場合に、特に威力を発揮する。転倒が検知され、その後1分間何の動きもないと、自動的に救急車を呼んでくれる仕組みがあるからだ。これは、一人暮らしの高齢者が転倒して動けなくなる場合や、一般の人でも一人で山道で転倒したり、はしごから落下したりする場合も考えられ、そんなときに誰かに見つけてもらうまで一人でいるか、1分後に自動的に救急車を呼んでもらえるかでは、命にかかわる問題になることも考えられる。

3つ目は、このApple Watchで心電図(electrocardiogram: ECG)が取れることだ。今回の発表では、全米心臓協会の会長が出演し、この新機能について賛辞を送り、その中で以下のように話していた。問題のある患者でも、医者に来たときには、問題が出ない場合も少なくない。そのため、自分でオンデマンドで頻繁にデータが得られれば、そこから問題の判別が、ぐっと容易になる。この心電図データにより、心房細動などの可能性が指摘可能という。心電図のデータは、専用のアプリによって解析される予定だ。ただし、このアプリは年内に使用可能になると言われただけで、日程は明確に発表されていない。

そして、これらの機能に対し、米国食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)の承認を得ていることが大きい。FDA承認を得ているということは、それだけデータに信ぴょう性があり、そのデータを信用して医者が見ることができるからだ。これにより、無駄な時間や労力の省略が可能となる。Apple以外にもヘルスケア・ウェアラブル・デバイスを販売しているところはあるが、そのほとんどは、FDA承認を受けていない。類似のヘルスケア・ウェアラブル・デバイスに対し、Apple Watchが精度その他でどれくらい優位なものかは、これからわかってくるだろうが、FDA承認を受けているこということは、十分に信用に足るものといえる。

今後さらに、ウェアラブル・デバイスのヘルスケア機能として期待されるものに、血圧測定、血糖値測定がある。いまでも血圧測定用に、指に簡単な器具を取り付け、スマートフォンに接続して使用するものはある。一般的に広く使われている、腕に付けて血圧を測るものに比べると精度はやや劣るようだが、指によって血圧を測る医療機器と比べ、精度はそれほど劣らないと言われている。血圧は一日の間でもかなり変化するし、もし時計のような常時身に付けているもので測れるようになれば、体調管理や身体の不調発見に大いに役立つだろう。血糖値に関しては、指に小さな針を刺して少量の血液サンプルを採り、血糖値を測定するものはあるが、血を採らないで血糖値を測るという、ヘルスケア業界の夢は、まだ実現していない。

Apple Watchシリーズ4は、これらのヘルスケア機能追加に加え、Watchの大きさは変わらないものの、表示領域は32%増加し、見やすくなっている。また、バッテリーも1.5日はチャージせずに利用可能という。使用しているチップも以前のものに比べ、倍の速さだ。価格は$399(Wifi利用)、$499(携帯電話接続利用)と、時計としては高価だが、コネクティビティ、フィットネス、それに今回加わったヘルスケア機能を考えると、これら新機能を有効利用するのであれば、十分その価値はあるように思える。Apple Watchの初版、シリーズ2、3、と購入を見送ってきた人も、今回は真剣に検討してもよさそうだ。

  黒田 豊


(2018年11月)

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