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今度はAmazonが株式時価総額1兆ドル超え

Appleが米株式市場初めてとなる、時価総額1兆ドルを超えた、ということが大きな話題になり、このコラムでもそのことを書いたのは、つい先月のことだ。その騒ぎもさめやらぬ9月4日、今度はAmazonの時価総額1兆ドル超えだ。ただし、その後、わずかに値を下げている。Apple、Amazonに続き、Google、Microsoftもすでに時価総額9000億ドルを超えているので、この2社が時価総額1兆ドルを超えるのも時間の問題だろう。

それにしても、Amazonのここ数年の株価上昇、したがって時価総額の上昇は、すごいものがある。今年だけでも75%近く上昇している。2017年初めから見ると175%の上昇、ここ5年では、実に600%近い上昇だ。その主な理由は、ここ3年利益を出し続け、3四半期続けて10億ドル以上の利益を上げていることがあげられる。

もともとアマゾンは書籍のインターネット販売からはじめ、販売するものを次々に増やし、いまやアマゾンで見つからない商品を探すのが大変なくらい、あらゆるものを販売している。その規模はEコマースで断トツの世界一、米国ではEコマースの49.1%を握っている。2位のeBayが6.6%、3位のAppleが3.9%というから、圧倒的だ。小売り全体でも3位と、小売り最大のWalmartに迫ろうとしている。

そして、当初はすべてAmazonで商品在庫をかかえ、販売していたが、最近は外部商店からの販売を仲介するMarketPlaceビジネスも大幅に増加しており、現在は売上高で、MarketPlace経由のものが半分以上を占めている。MarketPlaceビジネスでは、Amazonはお店の場を貸すだけで売上の15%の利益を上げることができ、さらに希望する外部商店には、追加の手数料を取ってPrime対応にして、利益を拡大している。AmazonのEコマースは長い間、赤字を続けながら売上だけ拡大していたが、このMarketPlace、それに倉庫に15万台におよぶロボットを導入して効率化を図ったのが功を奏し、利益を出すにいたっている。

しかし、Amazonは単なるインターネットのEコマースで終わらず、次々と新しいものに手を広げている。利益面でもっとも貢献しているのが、2006年に始めた、クラウド・サービスのAmazon Web Services (AWS)だ。これは当初、自社で余っているコンピューター資源を、必要としている他社に使ってもらう実験的なものとして始められたものだが、安価で使いやすく、ユーザー企業の需要レベルに合わせ、急激に使用を増減できるので、ベンチャー企業をはじめ、多くの中小企業に使われている。それだけでなく、大企業もクラウド・サービス利用による効率化を広げており、この分野でもこの1年で売上が49%伸び、世界のトップを走っている。

この2つが大きな売り上げと利益の源泉だが、これ以外にも、AIに力を入れ、Alexa(AmazonのAIエンジン)を搭載したAmazon Echoというスマート・アシスタントを2014年から販売し、市場でAIスピーカーとも言われる、新しい商品分野を確立した。また、インターネット・ビデオ配信の流れにも乗り、簡単にインターネット経由のビデオ・コンテンツをテレビ画面につなげるためのAmazon Fire TVを2014年に開発し、$40以下という安い価格で販売している。配信するビデオ・コンテンツも、Primeメンバー向けに映画やテレビ番組、さらにはスポーツの生放送などに広げている。そして他社が作成したコンテンツを配信するだけでなく、独自コンテンツの制作にも力を入れ、アカデミー賞受賞作品も生み出している。

小売りでは、Eコマースにとどまらず、大手高級食品スーパーのWhole Foodsを2017年に買収し、実店舗とEコマースのシナジーを追求している。また、Eコマースで販売したものの配送にも力を入れている。FedexやUPSなどの外部配送サービスを活用するだけでなく、独自のフリートを準備し、着々と独自の配送網の確立に向けて動いている。9月5日の発表では、ベンツのバンを2万台発注し、これらを貸与して個人などに配送サービスの提供を可能にすることも始めようとしている。今年中に100台を導入予定だ。500社程度の外部企業に、この配送サービスを担ってもらう予定とのことだが、すでに1万以上の応募があるという。将来的には、ドローンを使った配送サービスをすることにも積極的で、すでにパテントもとっている。

消費者向けビジネスでは、Eコマースだけに限らず、ビデオ配信や音楽配信など、また実店舗のWhole Foodsなどでも、Primeメンバーになると、得られる特典が多く、メンバーシップによる囲い込みも、Amazon全体のビジネスに、大きく貢献している。そして、これらあらゆる分野でのユーザーの購買動向、さらにAmazon Echoや車に搭載されるAlexaから得られる多くのデータを分析し、個々のユーザーへのより緊密なアプローチをしようとしている。

決済でも、以前からAmazonは1-clickによる決済をインターネット上で実施し、簡単に済ませるようにしている。また、Amazon Payは、Amazon以外でも、参加しているサイトの決済で使える。さらに実店舗では、Amazon Goという自動決済システムを備えたコンビニを今年初めから運営している。ここでは、お店に入るときにスマートフォンで自分が誰であるか認証を受ければ、お店で棚から商品を取り、そのままお店を出れば、決済までしてくれる。

このようにAmazonは拡大を続け、Amazonが参入した市場分野では、これまで主力企業だったところが次々と廃業などに追い込まれている。たとえば、書店大手のBordersは、2011年に店を閉じたが、2010年初めには、米国内に511店舗、従業員19,500人を抱えていた。大手おもちゃ小売りのToys R Usは、今年6月最後の店を閉じたが、今年3月には全米で735店舗もっていた。いずれもAmazonの市場参入だけが廃業の原因ではないかもしれないが、Amazonによる影響が大きいことは間違いない。

この2社のように廃業に追い込まれなくても、Amazonが市場に参入するというだけで、影響を受けそうな会社は株価を下げる。Death by Amazonとか、Amazoned(Amazonされる)などと言われる所以だ。一方、逆にAmazonの拡大に伴い、株価を上げる企業も増えている。物流や梱包関連などが挙げられる。ただし、今後はAmazon自身が配送にもかかわってくるようなので、将来はAmazonが競合にもなりかねない。

最近のAmazonを見ていると、順風満帆で多くの企業にとって脅威となる存在というイメージが強いが、ここまでにいたるAmazonは、決して順調なものではなかった。Amazonの設立は1994年、株式上場は1997年、当時の時価総額は$439 mil.だった。その後の2000-2001年のドットコム・バブルとその崩壊で、多くのインターネット・ベンチャー企業は倒産に追い込まれ、Amazonも何度も倒産の危機に見舞われたが、幸いにも投資家たちが、Amazonの長期的視点に立ったビジネスのやり方を認め、我慢してくれたのが、今日の成功につながっている。

社長のBezos自身ずっと以前から言っていることだが、自分たちのやっていることは、他の誰でも真似することが可能なビジネスモデルだ。そのため、彼はブランドの確立が最も重要であると考え、赤字を続けながらも将来のための投資を続け、Eコマースにおいても書籍からはじまり、次々と扱う商品を広げていった。また大量の注文に耐えられるロボットを数多く使った倉庫の自動化に力を入れ、インターネットから来る大量の注文を迅速にさばくビッグデータ処理、さらにはAIを使ったレコメンデーション・システムなどに次々投資していった。

それでも、つい4年前の2014年には、まだ赤字で、売上も伸びず、株価は20%下がって$300を切っていた(いまは$2,000前後)。このときの従業員数は米国で約30,000人だった。しかし、その後売上が急上昇し、2015年には売上1000億ドルを超え、2017年には1779億ドルまでになっている。従業員数も、いまは世界で575,000人、この1年で13万人も増えている。

大きくなったAmazonに対し、従業員への給与が安過ぎるのではないかなど、周囲の風当たりも強くなってきているが、創業以来、長期的視野をもとに拡大を続け、ブランド力を確立してきたAmazonの勢いは、当分止まりそうにない。

  黒田 豊


(2018年10月)

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