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SNSの社会的影響と責任

SNSの社会的影響については、以前からいろいろと議論されているが、米国では、昨年の大統領選挙へのロシアの関与に絡んで、ここしばらく大きな話題となっている。日本でも、11月に起こった神奈川県座間市での事件に、SNSの関連が話題になっている。

中でも注目されているのは、Facebook、Twitter、それにSNSを広くとらえて、YouTubeを含めた社会への影響だ。Facebookは、毎月のアクティブ・ユーザー数が20億を超え、Twitterも3.3億、YouTubeは15億のユーザーをかかえる、インターネット上の巨大プラットフォームだ。その社会的影響は、計り知れない。

物事には、どのようなものでも、よい面と悪い面がある。SNSにしても、よい面はたくさんあり、Facebookでは、どこかで知り合った人や友人とのつながりを保ち、その消息がわかったり、いろいろ自分の知らない情報が得られたりと、便利なことはたくさんある。Twitterにしても、災害時など、テレビなどのニュースでは間に合わない、時々刻々変化する現場の状況が、その場にいる人たちから伝えられ、避難などの役に立つ。私も、いろいろとSNSから恩恵を受けている面がある。

2008年の米国大統領選挙では、ほとんど無名だったオバマ氏が彗星のように現れ、大統領になったが、その背景には、SNSによる草の根の活動が大きく貢献したと言われている。また、アラブの春と言われたアラブ諸国での市民による活動で、独裁政権が崩壊する様は、まさにSNSなどのインターネットによるよい面が現れたものと言えるだろう。

しかし、残念ながらこのような、社会に大きなよい面をもたらすSNSにも、負の側面はあり、それが今回の2016年米国大統領選挙で表に出てきた形だ。この大統領選挙を待つまでもなく、本来公開されるべきでない犯罪、テロリストの宣伝、児童ポルノなどの写真や動画がSNS上に公開されるなどの問題も起きており、SNS各社もこれらに対しては、排除するという明確なポリシーを持ち、そのための対応措置は行っており、今後さらに強化すると表明している。

これらの写真や動画は、誰が見ても公開されるべきではないものがほとんどで、SNS会社スタッフによる監視、ユーザーからの報告、さらにはAIを使った動画分析により、早いタイミングで排除する仕組みができており、100%排除することは難しいが、多くの人の目にさらされる前に、排除される可能性は高くなっている。

問題は、そのように簡単に排除できないものについて、どう対応するかだ。一つは偽の情報だ。誰かが故意か間違いかにかかわらず偽の情報をSNS上に挙げた場合、それを偽の情報だと判断し、排除することは、簡単ではない。仮にSNS会社のスタッフがその記事を読んだとしても、それが事実であるかどうかは、即断できない。また、AIに頼っても、その判断を下すことは難しい。これに対しては、まず人が偽の情報である可能性のあるものを監視し、情報の真偽を確認中というコメントを入れ、調査する、という方法が実施され始めていると聞くが、真偽の確認には時間がかかるので、これで問題が解決されるものではない。

また、今回米国議会で問題となっている、米国大統領選挙へのロシアの関与の仕方は、もっと判断が難しい。単純な偽情報の流布というだけではないからだ。どのようなことが行われたかというと、例えば、ロシア政府に関連したアカウントを使った記事や広告購入により、うまく米国民をある方向に意識や考え方を扇動しようというものだ。これらは、基本的に犯罪やテロを直接広告するようなものではない。そして、米国は言論の自由が保障されている国だ。そんな中で出されるこのような記事や広告のどんなものを、どんな形でフィルタリングし、排除するかは、大変難しい問題だ。

フィルタイリングの仕方によっては、逆にそのSNS会社が何等かの意図をもって、情報を操作していることにもなりかねない。実際、トランプ大統領は、Facebookが保守系の意見をフィルタリングして排除しているのではないかと、批判している。その一方、野党の民主党は、Facebookがロシアの関与を許してしまったため、世論が曲げられてしまったのではないかと批判しており、Facebookとしては、両方から批判を受ける結果となっている。

Facebookによると、ロシア政府につながっているInternet Research Agencyに関連しているFacebookアカウントからの記事を読んだ人は、1.46億人に及ぶという。また、Facebookなどの強みの一つに、ユーザーがどんな人であるかを知っているため、ターゲット広告ができることがある。ロシア政府に関連したアカウントからの広告は、特定の人種、宗教、銃保持者、などを極めて巧妙に狙ったものだったという。Facebookの強みが、うまく利用された形だ。広告の内容は、米国民を分断するような、たとえば、イスラム教関係者向けのイベントの広告と、それに対する反対集会の広告を、それぞれに興味のありそうな人々に出すなどして、各々に多くの人を集めて国民の分断を煽るようなものもあったという。

また、このような広告に使うお金は、極めて安価で済むのも特徴だ。さきほど書いたInternet Research Agencyが使った広告費は、わずか$46,000(約520万円)だったという話も出ている。また、Twitter上の広告では、すべてのロシア関連アカウントからのものを合計しても、$236,000(約2700万円)に満たないという。さきほど紹介したイスラム教関係者の集会に関する情報の広告については、わずか$200(約22,600円)だったと言われている。

このような状況に、SNS各社も、もっと早くから対応すべきだったと振り返っている。FacebookのZackerberg社長は、大統領選の直後には、Facebookでの偽情報などが選挙結果を左右するなどというのは、ばかげた話だと言っていたが、いまはその発言を覆えし、もっと早くに対応すべきだったと話している。そして、安全とセキュリティに対応するスタッフを、2018年末までに20,000人にし、コンテンツ検査のためのAIソフトウェアなどの開発努力も倍にすると発言している。その結果、2018年度の経費は、2017年度の60%増しになる可能性があるとも述べている。会社の成長や利益よりも、安全とセキュリティに重点を置く姿勢が明確だ。巨大化したSNSプラットフォームとして、社会への大きな影響を考え、責任を全うしよう、ということだろう。

インターネットやSNSが存在するずっと以前から、偽の情報によるデマが広がることはあったし、いまでもあるだろう。ただ、大きな違いはインターネットやSNSによって、その拡散が一瞬で行われ、それも世界中に広がってしまうことだ。昔からのデマの場合も、その情報を信用すべきかどうかは、どこがその情報源かをもとに判断することになる。一ヵ所の情報源で不安な場合は、複数の情報源で確認する必要もあるだろう。インターネットやSNSの時代でも、それは同じことだ。

ただ、注意しなければならないのは、例えばTwitterで、もと米国務長官の名前に特殊文字を一つ加えたアカウント名が使われるなどして、あたかも信頼できる筋からの情報に見せかけている場合もあり、よくよく注意する必要がある。また、情報がテキストだけでなく、写真や映像を伴う場合、人は得てして情報源がどこかを注意せず、写真や映像を事実としてとらえてしまう傾向が強いという。そもそもその写真や映像が偽ものである場合もあり、これについても要注意だ。

今回は、いろいろとSNSの負の部分について書いてきたが、それだからと言って、SNSは怖いもの、避けるべきもの、と考えるのは、これまた早計だ。最初に書いたように、SNSで、人のつながりを保つことは、人生にとってとても有意義なことだし、いろいろ有用な情報がSNS経由で得られることも、決して少なくない。座間の事件にしても、自殺を望む人をSNSを使って早く見つけ、思いとどまらせることも可能なはずだ。SNSのいい面を生かしながら、負の側面もあることを頭の片隅に残し、有効に使っていくことが、インターネット時代に生きる、われわれ個人個人に課せられた課題だ。

  黒田 豊


(2017年12月)

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