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拡大を続けるAmazon.com

Amazonは、インターネットが広がり始めた1994年に会社を設立し、Eコマースサイトとしてビジネスをはじめたのは1995年だ。ちょうど私が最初の本「インターネット・ワールド」(丸善)を出版した年で、インターネットが世の中に広がり始めたばかり、将来どれくらい大きなものになるかも、はっきり見えないころだ。

当時、インターネット経由のEコマースは、大きな流れの一つで、たくさんのEコマースサイトが、雨後の筍のようにインターネット上に出現した。そんな中、当初から、その名前が示す通り、Amazonは世界最大の店にしようと考えていた。最初に販売したのは書籍だったが、その後、ありとあらゆるものを販売する、巨大なEコマースサイトに発展したのは、ご存知のとおりだ。

Amazonは、いまやインターネット上のEコマースサイトとして世界最大であることはもちろん、小売業界の大手Walmartをも時価総額でしのぐ、世界最大の小売業者となっている。そして、今年は実店舗の高級食料品スーパーとして有名なWhole Foodsの134 億ドルの大型買収の発表もあり、生鮮食料品実店舗を含め、小売りの世界でさらなる拡大を進めている。

インターネット発展の歴史を知る人たちは、2000年ころ、多数のEコマースサイトのビジネスが立ち行かず、消滅していったのをご存知だろう。実際、Amazonも倒産してもおかしくないほど、大きな赤字を出し続けていた。ただ、ひとつ他社と違うのは、会社設立当初から5年は赤字を続けると宣言し、投資家に納得してもらっていたことだろう。それでも、投資家の不満がなかったわけではなく、本当に倒産の危機もあったのではないかと思うが、ともかく拡大を続け、ブランド力をつけることにつとめた。

Bezos社長が当初から言っているように、Amazonと同じことをすることは、それほど難しいことではないので、ともかく他社に先んじ、ビジネス領域を拡大してブランド力をつけることにつとめた。その結果、2001年に、はじめて500万ドルの黒字を出すところまでこぎつけた。ただ、売上は10億ドル以上あり、利益率としては、0.5%と微々たるものだ。それでも、ここで黒字にこぎつけたことで、Amazonの拡大戦略は成功する可能性があると、投資家にも納得できるものとなっていった。

Amazonのビジネス拡大は、小売業としてだけではない。巨大なEコマースサイトを運用するためには、既存のIT技術だけではその実現ができず、独自のビッグデータ処理技術を開発し、クラウド・コンピューティングを発展させた。そして、それを単に社内システムとして使うだけでなく、そこで開発した技術を使った、クラウド・サービス・ビジネスにも参入し、いまやこの分野でもトップを行く。倉庫での作業効率化のためのロボット、商品流通システム効率化、配送時間短縮化のためのドローンや自動運転車による配送計画など、ユーザー・エクスペリエンス向上のための技術開発にも積極的だ。

また、書籍販売のビジネスも、単に本を販売するだけでなく、電子出版の道を開き、電子書籍専門の携帯端末Kindleを開発し、それを安価で販売することにより、電子書籍ビジネスを広げていった。さらに、テレビ番組等がインターネット経由のストリーミングで視聴されるトレンドを見るや、今度はそのビデオ・ストリーミング・サービスに参入し、ストリーミングしたものをテレビ画面でも見られるように、簡単で安価なデバイスAmazon Fire TVを開発し、販売している。

Eコマースで重要な、品ぞろえ、迅速なサービス提供のため、インターネットでのユーザー・エクスペリエンスを大切にし、いかに商品を購入しやすくするか、また、いかにユーザーがほしがりそうなものを提言するかに、大きな力を入れている。Amazonの強みの一つは、その持つレコメンデーション機能にある。使った人はよく知っていると思うが、ユーザーの購入やサーチ履歴をもとに、そのユーザーが買いそうな商品を提言するものだ。この「おすすめ」をいかにするかには、最近話題のAI技術が活用されている。

そして、Amazonは、その自社開発したAI技術をもとに、2014年には、GoogleやApple、Microsoftなどに先駆けて、現在AIスピーカーと呼ばれる製品ジャンルの家庭用AIスマート端末Amazon Echoを開発し、これまでになかった新たな市場を作り上げ、ヒット商品となっている。スマートフォン市場が10年経ち、成熟化する中、次の10年をになう製品ともいわれているものだ。

そして、そこで使われているAIエンジンのAlexaは、Amazon製品だけでなく、インターネットに繋がる他社製インターネット家電などにも使われ始めている。さらに、8月には、MicrosoftのAIパーソナル・アシスタントCortanaとのパートナーシップも発表され、双方の機能を結合して使えるようになった。あるビジネスのために開発した技術は、Amazonのあらゆるビジネスで活用し、拡大するAmazonのビジネスに相乗効果をもたらす。これもAmazonの大きな強みだ。

一般的にいえば、Eコマースで時間がかかりながらも、ようやく黒字化したので、しばらくは小売業に専念し、利益拡大に走るべきではないか、と考えがちだが、Amazonの戦略は、そうではない。どんどん前に進み、ビジネスを拡大していく、そしてそのためには目の前の利益率は低くてもかまわない、という明確な姿勢だ。実際、すでに創業23年になるAmazonだが、その売上は、最新の四半期で1年前の34%増にあたる437億ドルとなっているが、利益率は今だに1%に満たない。KindleやFire TVの値付けを見ても、ともかく市場シェアを取るために、採算を度外視しているのではないかと思われる安価な値付けで、利益率は二の次、三の次という考え方だ。

ここにあるのは、Bezos社長の「市場参入に乗り遅れて後悔することを、最小限にする」という考え方だ。確かに、インターネットが広がり始めたとき、「早い者勝ち」ということは、よく言われた。ともかく誰よりも早く事業をはじめ、ブランド力をつけ、他社が追い付いて来ないよう、どんどん先に進んでいく。Amazonの戦略は、まさにそれを実践し、成功している例だ。「イノベーションを続けなければ、Amazonはつぶれる」がAmazonの合言葉だ。

この拡大していくビジネスにおいて、Amazonは優良顧客を大切にするプライム・サービス戦略が、大きな柱となっている。現在、世界でプライム・ユーザーは6500万を超えるといわれる。プライム・ユーザーになるには、米国では年間$99支払う必要があり、決して低い金額ではないが、プライム会員になると、2000万を超えるプライム対象製品であれば、2日後の配達もすべて無料だ。

また、Amazonはプライム会員に対し、テレビ番組等のストリーミング・サービス、音楽のストリーミング・サービスなども、同時に利用できるようにしている。最近買収を発表したWhole Foodsでも、プライム会員には特別なサービスが登場する、といううわさだ。Amazon非プライム・ユーザーの平均年間購入額は$550 程度なのに対し、プライム会員の年間購入額は$2,500ほどで、4.5倍以上とかなりの差だ。プライム会員制度による顧客の囲い込み戦略は、大きな成功を収めている。

このようなAmazonの拡大戦略は、いまや投資家の間でも受け入れられており、株価は$1000を超え、時価総額でもApple、Alphabet(Googleの親会社)、Microsoftに次ぐ、世界4番目の規模だ。MBAの学生にも人気が高く、この1年で1,000人以上のMBA取得者を採用。ソフトウェア技術者は、来年5万人の採用予定と言われている。これからも拡大をし続けるAmazon。そしてAmazonが参入した業界では、競合企業の株価低下や、店舗の閉鎖、時には競合企業の廃業などの大きな影響も出る。Amazonの今後の動きは、あらゆる業界の企業にとって、そして消費者にとって、目が離せない。

  黒田 豊


(2017年11月)

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