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ポケモンGOフィーバー

米国で7月6日に配信を始めたばかりのスマートフォン向けゲーム、ポケモンGOが大きな話題だ。すでに社会現象とまで言われている。配信開始10日後の7月16日の段階で、すでに米国内のユーザー数は6500万を越えるという、驚異的なスピードでの広がり方だ。日本でも少し遅れて7月22日に配信が開始され、メディアを含め、大変な騒ぎ方だ。

テレビや新聞の報道で知っている人も多いと思うが、どんなものか簡単に説明すると、スマートフォン(AppleまたはAndroid)にAR(Augmented Reality:日本語では、拡張現実)技術と、スマートフォンについている場所を特定できるGPS機能を活用し、カメラに映る実際の景色に、皆さんご存知のポケモンがその場所にいれば、重ねて投影され、それを捕まえていくゲームだ。実際、最近、スマートフォンを見ながら歩いている人で、突然立ち止まったりする人を見かけるが、その中には、ポケモンGOをやっている人も少なくないのではないかと思う。

ポケモンは、ご存知のとおり、日本の任天堂が開発し、1990年代に爆発的な人気を博したものだ。今回のポケモンGOは、任天堂が直接提供しているものではなく、Googleからスピンオフしたベンチャー企業Niantic Labが開発、提供している。任天堂はポケモン使用許諾料を得ているし、Nianticに出資もしているため、その株価は米国での配信開始1週間で70%も上がった。もともと任天堂はゲーム機で一世を風靡したが、最近はモバイル系ゲームに押され、業績、株価とも低迷気味だった。それがこのポケモンGO人気で、一気に吹っ飛ぶ勢いだ。

最初は米国、オーストラリア、ニュージーランドの3か国のみでの配信だったが、その後、日本を含め、世界に配信が広がっている。すでに世界各国で大きな話題となっており、この社会現象が世界に広がっている。

米国で配信開始1週間あまりで6500万人のユーザーというのも記録だが、それだけではない。すでに1日のアクティブなユーザー数が、7月11日に2000万を越え、米国のモバイルゲームの歴史を塗り替えた。また、7月14日には、アクティブ・ユーザー数が人気のTwitterをしのいだとのことだ。一日の使用時間でも、Twitterの18分、さらにFacebookの22分を超える33分となっている。

収益の面でも、すでに大きな収入があるようで、今後さらにそれが大きく伸びる見込みだ。ポケモンGOのアプリそのものは無料だが、ポケモンを獲得、成長させるためのツールは有料で販売されており、それだけで、最初の3ヵ国だけのときでも、毎日100万ドルの収入があると言われている。これから世界でユーザー数が伸びれば、この収入も大きく伸びていくことは間違いない。任天堂自身、街を歩いていて、ポケモンが近くにいることがわかると、それを教えてくれるウェアラブル製品を$34.99で同時に発売したが、すでに在庫切れになっており、オークションサイトのeBayでは$135からの出品がある、という状況だ。

だが、収入の本命は、今後発表が予定されている、場所に関連したスポンサーからの広告などだ。ポケモンGOでは、実際のいろいろな場所、たとえば博物館や教会、公園などにポケストップやジムと言った、ポケモンそのものやツールを得たり、ポケモンのトレーニングをする場所が設定されている。そのため、ユーザーは、そのような場所を見つけ、そこに行くようになる。これまでは、Nianticが独自に設定した場所にポケストップやジムがあった。これを自分の店にセットしてもらえば、そこに人が集まる。それを実際に行ったのは、日本マクドナルドが最初のようだ。2900店すべてをポケストップまたはジムにするということで、人が集まることは、間違いない。このパートナーシップで、マクドナルドの株も上昇している。そこまでしなくても、自分の店の近くにあるポケストップなどに広告を出せば、店への誘導可能性も高い。

さらに、ルアーと呼ばれるものを購入し、それをあるポケストップに誰かがセットすると、30分間、そのポケストップにたくさんのポケモンが集まるようになっている。そのため、自分の店の近くのポケストップに、お店がルアーを購入することにより、たくさんの人達を集めることも可能になる。このような、場所(ロケーション)を利用したビジネスが世界中で行われれば、どれほど大きなビジネスになるか、計り知れない。

実はNianticはポケモンGOを出す数年前に、独自のモバイルゲームIngressを、ポケモンGOと同様のAR技術とGPS機能を使い、配信した。そして、そのゲームを行う人達の集まる場所での広告や、その近くの店への誘導も行っていたようだが、必ずしも大きな成果は上がっていない模様だ。そのため、ポケモンGOで同じやり方をして、本当に効果があるか不明との見方もあるが、ポケモンの強みは、配信開始1週間あまりですでに証明されており、今回は成功する確率が、はるかに高い。ポケモンの強みは、キャラクター達がとても親しみやすく、子供がポケモンで遊んでいても問題ないという親の安心感や、1990年代にポケモンファンだった人達が、再びポケモンに接し、ノスタルジアを感じて、またポケモンにかかわりたいと思うところがある点などだ。

このように大きなセンセーションを起こしているポケモンGOだが、問題点もある。ポケストップやジムなどをNianticが勝手に設定したため、自分の場所がそのような場所に設定されていることを知らず、人が集まってきて邪魔になったり、迷惑を被っている場合もある。博物館など、館内でポケモンGOをやるのは不適切なので、やめてほしい、ポケストップからはずしてほしい、と言っているところもある。場所によっては、ポケモンGOを禁止するところも出てきている。

ポケモンGOは、歩きながらポケモンを探したり、歩く距離によって、持っているポケモンの卵がふ化したりするので、外に出て、しかも歩くことによって運動になるため、家で部屋に閉じこもってゲームをするより、はるかに健康的だが、別な意味でいろいろな危険もある。ポケモンを探すため、スマートフォンを見ながら歩くと、当然回りに不注意になり、交通事故にあったり、駅でホームから線路に落ちてしまう、などの危険がある。実際、ニューヨークの地下鉄では、ポケモンを取るために線路に降りない(落ちない)ようにと警告している。当然のことながら、車を運転しながらの利用はしないよう、警察から警告が出ているが、すでに事故も発生している。

また、ポケストップのようなところには、多くの人が集まり、しかもスマートフォンに神経を集中させているため、スリの絶好の稼ぎ場所になる可能性もあると言われている。さらに、ゲームの性格上、病みつきになり、はまってしまうと、時間が経つのを忘れてゲームに没頭してしまい、本来やるべき仕事や勉強がおろそかになる、という他のゲームと同様の問題があることも、忘れることは出来ない。

いまは人々が使い始めてまだ日にちがいくらもたっておらず、みな興奮して使い始めたところだが、ゲームはいずれ長く続ける人と、やめていく人に分かれていく。この先、いつの段階で人がやめていくか、どれくらいの人が長く続けるかが、このゲームの長期的な成否を担っている。いずれにしても、世界各国でのこのフィーバーぶり。当分の間は、このポケモンGOフィーバーが世界で続くことになるだろう。

  黒田 豊


(2016年8月)

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