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ブロックチェーン技術は、世の中を大きく変えるか?

ブロックチェーン技術、一体何のことだろう、と思う方も多いかもしれない。IT関連の仕事をしている人であれば、聞いたことのある人も少なくないと思うが、一般の人にはなじみのない言葉だろう。技術の詳しい話はさておき、一体どんなもので、どんなことに利用できる技術か、簡単に書くと以下のようになる。

ビットコインという言葉は、聞いたことがある人は少なくないだろう。仮想上の通貨と言われ、実際、世界で約10万社がビットコインによる支払いを受け付けている。みなさんよくご存じのAmazon、Microsoft、Dell、TargetやSubwayなども受け付けている。ビットコインとドルの交換レートも、円などの通貨と同様存在しているが、このレートが大きく変動すること、また、以前日本でビットコインの交換所を提供していた会社が大量のビットコインを盗まれるという事件もおき、ビットコインに不審や不安をもっている人も、少なくない。

このビットコインという仮想通貨を成り立たせている技術が、ブロックチェーン技術だ。もう少しだけ説明すると、暗号化技術を使い、多くの分散されたマイナーと言われる人たち(会社)により、確かにこのビットコインはだれだれのもの、と証明することによって、成り立っているものだ。このブロックチェーン技術は、ビットコインという仮想通貨の存在の証明だけでなく、あらゆるものの存在の証明に使うことができる。そこが今、IT業界およびこの技術を使って変革が起こる可能性のある業界で、注目されている。

どんなもので使われるかというと、たとえば、不動産取引のスピードアップ、コスト削減、不正防止に役立つと言われている。不動産取引では、不正による損失が、米国で年間15億ドルあると言われる。正常に取引される場合でも、中間手数料が第三者に渡るし、取引成立後、完了まで30-60日かかるのが現状だ。これがブロックチェーン技術を使うことにより、大きく改善できる。また、銀行などでも、国をまたぐ資金トランスファーなどに使えば、時間とコストが大幅に削減できるといわれている。

さらに、何かの存在を証明できる、ということで、資産登録にも活用でき、実際にそれをビジネスにしているベンチャー企業もある。面白いことに、この会社は当初、絵画など高級品の登録を中心にビジネスを開始したが、これは取引頻度が低すぎて、ビジネスにならないことがわかった。ところが、収集家が集めるスニーカーは、価格は絵画ほど高額ではないものの、取引頻度が高いため、大きなビジネスになっているという。ビジネスというものは、やってみないとわからないもの、といういい例だ。

仮想通貨のビットコインもそうだったが、このブロックチェーン技術を使ったソリューションを提供している会社は、ベンチャー企業が多い。そのブロックチェーン技術関連ベンチャー企業への投資状況を見ると、2009―2013年の5年で約$93 millionだったのに対し、2014―2016年(3月)までですでに$993 millionと、10倍を超えており、この2年あまりで大きく伸びているのがわかる。

ベンチャー企業、そしてそれらに対する投資は急増しているが、これに対し、大手企業は、この技術をどのように見ているのだろうか、という疑問がわいてくる。まずユーザー側から見ると、銀行を含む金融業界では、この動きに大きく注目している。それは、もしベンチャー企業がこの技術を使って、迅速で格安のサービスを始めた場合、銀行は今のビジネス、少なくともその一部のサービスから、撤退しなければならない可能性があるからだ。ただし、注目していろいろ試行してはいるものの、本格的に使おうという動きには、まだなっていない。

一方、技術系企業大手はどうだろうか。IT大手のIBMは、かなり本気でこの技術は世の中を大きく変えるものと考えている。ブロックチェーン部門ディレクターのJohn Wolpert氏は、今のブロックチェーンは20年前のインターネットの状況のようだ、と述べている。そして、インターネットがそうであったように、ブロックチェーン技術は、今後あらゆる業界に、深くかかわってくるだろう、と述べている。

実際、インターネットの場合、最初にベンチャー企業が次々に立ち上がり、世の中を変えていった。そして、当初はインターネット経由のビジネスをe-ビジネスなどと言って、特別扱いしていた。しかし、いつの間にか、どの企業も当たり前のようにe-ビジネスを自社のビジネスの一部に組み込み、通常ビジネスの一部になってしまった。このようなことが、これからブロックチェーン技術についても起こるのではないか、というのだ。

IBMはブロックチェーン技術を、オープンで皆が共有できるものにすべきとの考え方から、ブロックチェーンのビジネス利用に関するオープンなHyperledger Projectを立ち上げ、すでにいくつかの大手日本企業を含む、数多くのIT企業やユーザー企業がそれに参加している。そして、さらに注目されるのは、プライムメンバーとして、DTCC(Depository Trust & Clearing Corporation) が入っていることだ。

DTCCといえば、証券取引決済を行う組織だ。そして、そのDTCC のMichael Bodson CEOが、「ブロックチェーン技術によって、この業界のインフラストラクチャーを変革する大きな機会」と言い、ブロックチェーンのような技術に金融業界がこぞってコラボレーションすべきだ、と述べたことだ。これにより、金融業界は、ブロックチェーン技術に取り組む姿勢が鮮明になったと言える。ただし、もしブロックチェーン技術を証券取引決済に全面的に使うことになると、DTCC自体が不要になる可能性も十分あり、DTCCがどこまで本気にブロックチェーン技術活用を推進するか、見極める必要もある。

このように、ブロックチェーン技術は今のシステムを大幅に改善し、より早く、より安く、より安全にする可能性を秘めているが、問題がないわけではない。ひとことでブロックチェーン技術とここまで書いてきたが、ブロックチェーン技術と呼べるものは、複数存在し、それぞれに長所短所を持っている。ブロックチェーン技術が本格的にいろいろな業界で使われるためには、少なくとも業界ごとに、どれか一つのものに集約される必要がある。それがどれになっていくかは、まだ全く見えない状況だ。IBMが立ち上げたHyperledger Projectは、多くの企業が参加し、共通のオープンソースのブロックチェーンを構築しようという試みだ。

また、ブロックチェーン技術は、これまで使われている技術とあまりにも大きく異なる。これまでのシステムは、その効率と安全性確保のため、中央集中型で、その中心になっているところが、データが正しいかの責任を持つ、という仕組みだ。これに対し、このブロックチェーン技術は、分散型で、多くの参加者が共同でデータが正しいかどうかの責任を持つ、というものだ。このように全く正反対の考え方の技術のため、多くの企業等は、注意しながら様子見、というところが多い。

このような状況に対し、米国下院のコミティーに呼ばれた、IBMフェローでブロックチェーン技術担当副社長のJerry Cuomoは言う、「ブロックチェーンが新しい、これまでと大きく異なる技術のため、注意して取り掛かることは歓迎する。しかし同時に、あまり慎重になり過ぎ、世界に遅れを取ることがないよう、ブロックチェーン技術の有用性を確認しはじめることも忘れないように」と。さて、この技術、どこまで世の中を変革するか、そしてそれはいつのことか。注目すべき技術であることは、間違いない。

  黒田 豊


(2016年5月)

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