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Internet of Things (IoT)は、どこまで広がるか

Internet of Things (IoT)という言葉が、特に今年に入ってから新聞等で目立ってきた。もうご存知の方も多いと思うが、言葉のとおり、「物のインターネット」のことだ。インターネットといえば、もともとパソコンをはじめとするコンピューターをつなげるネットワークとして作られたものだ。その後、スマートフォンやタブレットという、コンピューター機能を持つモバイル端末が世の中に広がり、インターネットにつながるものが飛躍的に増加した。

そして、今度はコンピューター機能を持たない、「物」がインターネットにつながり出した。数年前から広がり始めた、身に着ける健康機器をはじめとするデバイス、いわゆるウェアラブル端末が、次々とインターネットにつながり、それらから集まるデータを分析して、いろいろなサービスを提供するようになってきた。以前は歩数計などが単体で使われることもあったが、今は、このような健康機器はインターネットに接続され、情報の分析をサービスとして提供することが当たり前、その機能がないと商品が売れない時代になってきた。

IoTという言葉や、物をインターネットにつなげる、ということは、特に今年はじまったことではない。業界では数年前から、これからはIoTの時代が来ると言われ、騒いでいたが、大きな広がりを見せていなかった。それが年月を経て、ようやく開花しようとしている、というのが実際のところだ。

IoTでつながる物は、大きく2つのレベルに分けることができる。一つは、ウェアラブル端末のように、その物がひとつひとつ数えられるもの。もうひとつは、多数のセンサーをインターネットに接続するものだ。今年はじめ、ラスベガスで行われたConsumer Electronics Show(CES)では、IoTが大きな注目を集めたが、そのほとんどは前者だ。

CESに出ていたものをいくつか上げると、ネットワークに接続された冷蔵庫や洗濯機などの家電製品、空調の調節機などのエネルギー管理システム、自動車、遠隔から操作可能なドアロックなどだ。いずれもそれら機器からのデータを収集して状況を分析したり、逆にスマートフォンなどから指令を出して、遠隔の機器を操作するものなどだ。CESは、その名のとおり、消費者向け製品のショーなので、消費者が実際に使うものがほとんどで、一般の人たちにとっても、わかりやすいものだ。

企業向けでは、IoTとしてすでに広まっているものに、飛行機のジェットエンジンの状況モニターがある。これはすでに5年ほど前から行われており、ジェットエンジンにたくさんのセンサーを取り付け、飛行中の状況を把握することにより、着陸したときに整備が必要かどうか判断する。そのため、無駄な定期点検が省け、また、トラブルが起こる前に、それを予知して対応することが可能となった。最近は、それだけでなく、気象情報などをもとに、飛行機の最適航路を提案し、燃費節約にも貢献している。もともとジェットエンジンというハードウェアを販売していたメーカーが、関連するサービスを、保守サービス以外にも広げ、サービス会社への変身を図っている。

建設機械メーカーも、自社の機械の使用状況データをネットワーク経由で吸い上げ、その稼働率から使われ方を判断したり、故障を未然に防ぐなど、保守点検の効率化、また、次の販売に向けてのアクション・プランにつなげたりしている。

一方、多数のセンサーをインターネットに接続する例として、わかりやすいのは農業だ。土の温度や湿度、環境の温度や湿度、作物の成長具合、害虫問題の状況など、いろいろなデータを分析し、水や肥料をやる最適タイミングをはかったり、温室の最適温度調整などに活用し、使用する水量やエネルギーの最小化を図ることができる。作物についても、最適な収穫時期を判断することができる。

あらゆる物をインターネットにつなげて、できることはたくさんある。いろいろなものからデータを収集し、分析して最適化したり、これから起こることを予測したりできれば、より便利になり、効率的で、コスト削減などにもつながる。このようなことが可能になったのは、インターネットにより、いつでも、どこでも、あらゆるものが接続可能になり、そこで集められたデータを、迅速に分析するビッグデータ技術が発展してきたからだ。分析には、最近人工知能(AI)も使われ始めている。IoTに対するニーズは無限にあると言ってもいい。

だが、IoTが言われて何年も経つが、その広がりには、時間がかかっている。その理由は、これらのシステムを構築するのに時間がかかるから、という理由ももしろんあるだろうが、それだけではない。問題は採算性だ。IoTシステムを構築すれば、何らかのメリットは享受できる。ジェットエンジンなどは、高価なものだし、飛行機の保守整備時間を節約できれば、大きなコスト削減につながる。しかし、ジェットエンジンの状況モニターのような、システムを構築し、運用するためのコストに見合ったメリットが得られるものが、まだたくさんない、というのがこれまでの現実だった。
とは言え、技術は年々進歩し、センサーの価格、ネットワークの価格、分析処理のためのシステム価格は、いずれも下がってきている。その結果、システムを構築・運用するコストも、年々低下している。昨年採算が合わなかったことも、今年なら採算が取れるかもしれない。年々採算のとれるアプリケーションが増えてきているのだ。

一見メリットばかりが見えるIoTシステムだが、ばら色な話だけではない。収集するデータが多くなれば、情報漏えいによる問題も範囲が広くなってくる。また、誤作動した場合、命にかかわるような場合や、社会に大きな影響を及ぼすものもある。自動車のセンサーシステムが誤作動して異常な動きをすれば、命にかかわる問題になる。電力会社のシステムに故障が生じれば、停電して生活に支障が起こる。システムの誤作動は、その組み込まれたソフトウェアのバグ(エラー)が原因の場合もあれば、外部からハッカーに侵入され、故意に誤作動を起こすにようにされてしまうことも考えられる。セキュリティは、IoTシステムの大きな課題だ。

課題はあるものの、IoTシステムの導入によって、メリットが得られるものは無限にある。今年がIoTにとって大きな年になるかどうか、確かなことは言えないが、IoTが世の中に幅広く広がり始め、今後も広がり続けることは、間違いない。

  黒田 豊


(2015年9月)

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