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メリットも問題点も多いドローン

や頻繁に話題になるドローン。もう言葉を聞いたことのない人はほとんどいないだろうが、遠隔操縦できる小型無人航空機のことだ。大きさも手で持てる程度、安いものは数百ドルからあるので、ほとんど誰でも買うことができる。このように安価になってきたので、個人が趣味で使う場合も増えている。日本では、特に4月に首相官邸の屋上にドローンが知らぬ間に落下(着陸?)していたことに懸念の声が大きく上がり、マイナス面が多く報道されているようだ。

一方、米国で大きな話題になっているのは、その商用利用だ。現在、米国連邦航空局(FAA: Federal Aviation Administration)では、基本的にドローンの商用利用を禁止しており、例外として、個別に条件を付けながら、許可を出している。現在許可を受けているのは、農業、鉱業、建設業、映画撮影、インフラ保守管理、保険業などの企業/組織で、その数は300を超える。これを変更し、ある一定の条件を満たせば、FAAの許可を取らなくてもドローンを使えるようにするための案が、今年はじめFAAより出され、これから公聴会などで時間をかけて議論し、正式なものになるのは来年終わりころと言われている。

マイナス面の報道も多いが、ドローンの活用には、たくさんのメリットがある。ドローンを使えば、これまでできなかったことができたり、すばやく安価に行うことができたりする。たとえば、災害現場などで、人が簡単に立ち入ることができないところに入って、その状況を撮影したり、広大な建設現場の様子を撮影して、設計どおりに建設が進んでいるかを、大きなコストをかけずに見ることができる。米国の広大な農場では、農地や作物の状況確認、肥料等の散布にドローンを使えば、安価に早く対応することができる。ついこの4月にFAAから許可のおりた保険大手3社は、災害時に、その状況を早く正確に把握し、保険処理の迅速化に対応しようとしている。

Eコマース大手のAmazonは、将来ドローンを使って注文された商品を届けるサービスを行いたいと2013年に発表し、すでにその実験を行っている。Amazonに負けじと、Googleや貨物大手のDHLなども、同様の計画を持っている。Amazonのめざしているのは、ドローンを使うことにより、発注から30分で荷物が届くようにすることだ。そんなサービスが本当にできたら、ユーザーにとって、とても便利なことは間違いない。安価なドローンを使えば、これ以外にもたくさんのメリットがある。

しかし、ドローンには問題点も少なくない。まずは安全性の問題。天気もよく、障害物も何もないところでは問題なく飛ぶドローンも、ひとたび環境が悪くなると、まだまだそれに対応できるところまでは来ていない。深刻な問題のひとつは、障害物を見て、それをよけることができるかだ。FAAが一番心配しているのは、有人飛行機との接触で、そのため、空港周辺でのドローン使用や、ドローンの飛べる高度については、特に厳しく制限している。また、電力会社や電話会社等は、ドローンが電線などに当たり、問題を起こさないか懸念している。

一般市民への危険も少なくない。ドローンを目的地に向かわせるのはいいが、たまたまそこに人がいたらどうするか。人をうまくよけてドローンが着陸したり、荷物を降ろすことができるか。また、経路の途中に樹木やビルなどの建物、車などがある場合、うまくそれをよけて飛行できるか。そのような障害物を検知するセンサーと、それを解析し、飛行経路をうまく変更できる必要がある。技術的にも、このあたりのところは、まだ数年先にならないと実現しないとの意見が多い。また、人が見える範囲で操縦するとしても、免許もなく誰でも操縦できることから、操縦ミスによる事故の危険も大きい。数キログラムあるいはそれ以上の重さのものが空から落ちてくるのだから、当たり所が悪ければ大ケガ、あるいは死ぬこともあるかもしれない。

このような状況のため、また、2014年末の一般の人の意識調査結果から、米国ではドローンの商用利用に反対する人が43%(賛成は21%)と多いこともあり、FAAが例外的に許可しているドローン使用でも、操縦者から目で見える範囲などの条件がついている。これではドローンの有効性が限られる、ということも事実だが、ドローンが自分で障害をうまく避けて飛行できないのであれば、当面は仕方ないことだろう。Amazon等が考えている荷物配送では、この条件を取り払ってくれないと実用性が極めて低くなるが、FAAも最近ようやく技術の進歩を見極めながら、柔軟に対応しようという姿勢を見せているようだ。

安全面の問題以外にも、プライバシーの問題が大きい。ドローンが突然自分の裏庭に現れたらどう思うか想像すれば、プライバシーの問題は一目瞭然だ。単にプライバシーだけでなく、家の状況などを調べられ、そのとき人がいないことがわかれば、空き巣に狙われることも十分考えられる。FAAはプライバシーにも配慮し、たとえば保険会社へのドローン使用を許可する場合、住宅地等で使用するときは、ドローンから見えてしまう住宅のオーナー全員からの許可が必要としている。これは保険会社にとっては頭の痛いことだが、プライバシーを守ることを考えると、やむを得ないことだろう。

ドローンは国家レベルでも大きな懸念を抱かれている。米国ではホワイトハウスにドローンが落下したことが、今年1月に大きな問題となり、日本でも先に述べた4月の首相官邸屋上へのドローン事件に、懸念の声が大きく上がっている。ドローンが悪の手で使われ、爆弾などを持って飛んできたらどう対応するのか。極めて大きな問題をかかえている。昔、日本でオウム真理教によるサリン事件というものがあったが、彼らは最終的には東京の空から無人飛行機で有毒のサリンをばら撒き、大量殺人を計画していた、という話が思い出される。実際、フランスでは、原子力発電所等重要インフラの近くを何度もドローンが飛んでいたのが目撃されており、フランス政府は早急にドローン監視体制を構築しようと動いている。おそらくフランスに限らず各国みなそのような備えを準備中に違いない。商用や一般ユーザーに対しては、ルールを作ることである程度ドローンの安全性等を確保できるが、悪の手にかかると、そのようなルールは通用しないので、当然守りを固める必要が生じる。

最初に書いたように、米国では商用のドローン利用についてFAAが対応しているが、ドローンの個人利用(高度122メートル以下に限定)については、FAAはガイドラインでやってはいけないことを規定しているのみだ。こちらに関しては、州が対応しており、カリフォルニア州では本人の許可を得ず、ドローンによって誰かのイメージ(写真、動画)や音声をとることを禁止する(警察は例外)法律が準備されている。

新しい技術が起こったとき、プラスの面が多く、問題点がほとんどない場合もあるが、ドローンのように、問題点が多い場合もある。しかし、問題点が多いからと言って、単に規制ばかりでその使用を抑えるのでは、もったいないし、人間社会の成長もない。ドローンの問題点を、より進んだ技術で、そしてしかるべきルールで、安全かつ有効に使えるようにする、人々の英知が求められている。

  黒田 豊


(2015年6月)

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