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バラエティーに富んだ今年のCES

今年も1月6-9日の間、ラスベガスでCES(Consumer Electronics Show)が行われた。規模はこれまでの最大で、入場者数は海外からの45,000人以上を含め、17万人を越えた。出展社数は3,600、ベンチャー企業も前年の220から375へと、大幅に増えた。

昔はIT関連のビジネスショウといえば、COMDEXだったが、すでに10年以上前にCOMDEXはなくなっており、米国でのIT関連のショウといえば、このCESだ。しかし、このCESも、ここ数年マンネリ化し、あまり面白くなくなっていた。私は、毎年CESに行っていたが、昨年は行くのをやめたほどだ。このコラムでもCESについて最後に書いたのは、2011年だから、もう4年も前のことだ。しかし、今年は何か変化がありそうに思えたので、2年ぶりに行ってみた。

そして、今年は久しぶりに行ってよかった、面白いCESだったように思う。シリコンバレーからの日帰りでざっと見てきただけなので、見落としたものも多いと思うが、それでも今年はバラエティーに富んでいて、面白いショウだったことは見て取れた。2年前は、大型テレビと3Dテレビ、スマートフォンにタブレット、というのがメインで、どこの大手メーカーも似たり寄ったりのものを展示しており、変化に乏しく、退屈して帰ってきたのを覚えている。

しかし、今年は、いろいろ目新しいものがあったし、各社それぞれ特徴を出していたのが興味を引いた。まず、大手家電メーカーから見ると、これは当然予想していたことだが、4K、8Kテレビが多く展示されていた。そこは各社共通だったが、それ以外の部分では、それぞれの会社で特徴を出していた。パナソニックでは、バッテリーや飛行機のエンターテイメント・システム、光を使ったサイネージ、東芝は東芝グラスやそのヘルスケアへの活用、シャープはラップアラウンドLCDやシースルー・ディスプレイ、ソニーはライフスペースやスマート・アイグラス、サムスンはTIZEN OSを使ったエンターテイメント製品や次世代家電、LGは湾曲OLED画面や次世代家電、GWatchなどだ。サムスンは、キーノート・スピーチで、家電を含むあらゆるものをネットワークにつなげる、IoT(Internet of Things)に注力することを明確にしている。製品のバラエティーだけでなく、従来の消費者に直接販売するBtoC(Business to Consumer)製品だけでなく、ヘルスケアやバッテリー、飛行機のエンターテイメント・システムなど、直接消費者に販売しないBtoB(Business to Business)製品が増えていたのも、特徴のひとつだ。

大手家電メーカーがそれぞれ特徴を出していたというだけでなく、CES全体としも、バラエティーに富んだ製品カテゴリーが展示されていたのが今回の特徴だ。車関連での展示も多かったし、ヘルスケア/フィットネスの分野でも幅広い製品が出ていた。また、3Dプリンター、バーチュアル・リアリティ(VR)、オーグメンテッド・リアリティ(AR)、ロボット、ドローン(小型無人飛行機)、ウェアラブル・デバイス、スマートウォッチ、スマートホーム、子供や教育に関連した製品など、随分と市場分野が広がった感がある。以前から多少は出展されていた分野も多いが、それぞれが目立った存在になってきたところに、今回の特徴がある。

車メーカーの展示も増え、今回は10社が出展。車が単にその走行性能やデザインだけでなく、ICTを使ってどのようなことができるかが、大きな差別化要因になってきたことを明確に示している。また、車メーカーそれぞれで、何に注力しているかが明確になるような展示だった。ドイツ・メーカーのメルセデス・ベンツやアウディは自動運転車に力を入れており、将来の車のイメージとして、4人の座席が向き合っていて、運転は完全に自動化システムにまかせる、というものが注目を浴びていた。これに対して、トヨタは燃料電池車MIRAIを発売したばかりということもあり、これを前面に出しており、米国メーカーのFordやGMは、インターネットと車をつないだエンターテイメント・システムや、安全システムを中心に展示していた。Fordはキーノート・スピーチで、「Smart Mobility Plan」を発表、会社の創設者であるHenry Ford が111年前に行ったように、人の「移動」の仕方を変える、と述べている。

ヘルスケア/フィットネスの分野では、ともかく展示スペースが大幅に広がり、多くの出展メーカーがおり、その市場の広がりを感じさせた。心拍や体温を測るだけでなく、筋肉のレベルを測ったり、体型を3Dで捕らえるシステムなど、新たな試みが見られた。ただ、市場に受け入れられるかどうかは、これからの製品の改善にかかっているように見える。3Dプリンターは、多くの出展があり、もはや製品として一般化した感がある。ウェアラブル・デバイスでは、単に機能や価格だけでなく、デザインが重要と言われるが、クリスタル・ガラス装飾品メーカーのスワロフスキーが、女性客をターゲットに、アクティビティ・トラッキング・ジュエリーを展示していたのが、目を引いた。

全体として感じるのは、製品が多彩になったことに加え、多くのものがセンサーを使って情報を取り、それをもとに何かをコントロールしようとしているものが多い点だ。ネットワークにそれをつなげれば、IoTになる。今年のCESはIoTが目立ったという評価も多いが、ネットワークにつなげないでセンサー情報をもとに、何かをコントロールするものも少なくない。人が使ういろいろなデバイスで、センサーを活用して、その使いやすさ、ユーザー・エクスペリエンス(UX)を競っているものが、どんどん増えてきている。

これまでのコンピューターの歴史は、処理速度を速め、いろいろな作業が短時間でできるようになったが、ここ数年、そしてこれからのコンピューター利用は、処理速度が速くなり、ネットワークでつながることによって、これまでできなかったことができるようになる世界だ。センサーを使ったたくさんのアプリケーションは、それを如実に表している。そして、人々にいろいろなものが使いやすくなる、UXの向上が大きな注目点だ。

IoTに関していえば、今回のCESで多く見られたのは、パソコン、スマートフォン、タブレット以外の、主に「人が使うもの」のネットワークへの接続だ。これは、かなり進んできたと言えるし、ウェアラブル・デバイスなどは、ネットワーク接続が、もはや必須だ。ただ、これはIoTの世界では、まだ入り口に過ぎない。その先には、もっともっと多くのセンサーが使われ、単に人が使うデバイスをネットワーク接続するのではない、多数のセンサーが直接ネットワークにつながる、桁違いに広い世界が待っている。わかりやすい例としては、農業で気温、湿度、害虫被害状況、作物の生育状況などをモニターし、農作の最適化を図るようなものがある。このように、多くのセンサーがネットワークでつながり、これまでになかったことができる世界が、すでにはじまっている。IoTの世界は、そこまで行って、はじめて本当の規模が見えてくる。IoTは数年前から騒がれだし、少ずつ発展してきているが、今後どれくらいの早さで広がるかは、それぞれのアプリケーションで、コストに対してメリットがいつ上回るかの採算性にかかっている。

今回のCESは、バラエティーに富んだ製品が多くみられ、将来の展開が楽しみだが、いろいろなものがネットワークにつながると、どうしてもセキュリティとプライバシーの問題が気になる。もし自動運転車やドローンが、ハッカーによって乗っ取られたらどうなるか。ウェアラブル・デバイスでトラッキングされた医療・健康情報が、知らないうちに誰かの手に渡ってしまうことはないか。考え始めると、不安なこともたくさんある。これらのIoT製品がうまく市場に広がるためには、セキュリティとプライバシーへの対応も、忘れてはならない。

  黒田 豊


(2015年2月)

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